大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第二小法廷 昭和33(オ)350 判決

主 文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理 由

上告理由第一点について。

所論は要するに原審が適法になした証拠の取捨事実認定非難に帰するので採用で

きない。

同第二点ないし第四点について。

所論非監置精神病者視察規程並びに精神障害者保護視察規程は、警察権の行使に

ついて上司警察官が部下警察官に対し職務上これを指揮するために発した職務命令

であつてこれらの規程が行政執行法に基く法規であるとは解せられない。そして右

各規程は直ちに一般人に対し拘束力を有するものではないと解せられる。のみなら

ず原判示のような方法による名簿登載及び視察は、生命財産に対し何らの強制を伴

うものではなく、かつ警察が公共の秩序を維持し、生命財産の保護、防犯の事務を

行う範囲内に属しないとはいえないから、本来右各規程を俟たなければ警察の職務

としてこれをなしえないものではないというべきである。本件においてみるに、原

審が証拠上確定した事実関係のもとにおいて、碑文谷警察署の担当係官が、上告人

の性格、行動に著しく常人と異る傾向があることを看取し、部外秘として警察部外

の者に対しては絶対に閲覧を許さなかつた非監置精神病者名簿なる帳簿に上告人の

名を登載し、原判示のような精神障害者として取扱つたのも当該状況のもとにおい

ては保安上止むを得ない措置であつたと認めざるを得ないと判断し、上告人が警察

職員の違法行為ないし職権濫用行為によつてその人格並びに名誉を毀損せられたと

の上告人の主張は凡てこれを認め難いとした原判示は肯認できる。論旨中違憲をい

う点もあるが、右各規程は一般人に対し拘束力を有する法規たる性質を有するもの

- 1 -

であるとの前提に立つものであつて、その前提の採り得ないことは前に説明した通

りであるばかりでなく、右違憲の主張の実質は、本件警察職員の違法行為ないし職

権濫用行為によつて上告人の人格並びに名誉が毀損せられたとの上告人の主張を排

斥した原審の判断を争うだけのものと解せられ、違憲の主張は前提をかき、その余

の所論は原判示の結論に影響のないところであるから論旨はすべて採用できない。

同第五点について。

論旨は違憲をいう点もあるが、実質は原審が適法になした証拠の取捨、事実の認

定を非難するに帰し、採用の限りでない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと

おり判決する。

最高裁判所第二小法廷

裁判長裁判官 藤 田 八 郎

裁判官 池 田 克

裁判官 河 村 大 助

裁判官 奥 野 健 一

裁判官 山 田 作 之 助

- 2 -

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!